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◆ユメ◆

・久志視点のSS。

・銀誓館学園に入学する少し前のこと。

・アンオフィ…非公式がネタ少しあります。

・ミツキの文章能力は皆無に等しいです。

・多少シリアス風味?





■■■■




桜もとうに散り、季節が移り変わった頃


「…あのね、久志ちゃんにお話があるの」

 そう俺は悠女(ゆうめ)の部屋に呼び出され、中にいる。

長い眠りから目覚めて戻ってきた悠女の部屋は綺麗に片付いていた。
…と言うか、必要最低限の物しかなく酷く殺風景で。
元々こんな感じだったが、あと数日でここを出るから余計そう思うのかもしれない。


入ってきた俺に気付いた彼女はふわりと笑って出迎えた。


…妙な、違和感。

そんな俺の様子に気付かず悠女は話し始める。


「えっと、お話ってね。…今度行く学校からは、私『ゆめ』って名前で通そうと思うの」


「ゆめ…?何でまた…」

可愛いでしょ、と悠女は楽しそうに笑っているが、俺には読み方だけとはいえ名を変える理由が解らない。

「…んー。心機一転、高校デビュー?」

唇に指をあて、考え込む素振りを見せる悠女。

……というか、悠女はこんなにも表情がコロコロと変わる子だっただろうか?
俺の知ってる彼女は、どこか不安げにしていて 笑っても遠慮がちに笑みを浮かべるくらいだったのに…。

「…変わりたいから、かな」

ふっ、と悠女から笑みがなくなり真剣な面持ちで俺を見上げる。

「…強くなりたいの。今までの弱いユウメはもういらないもん」

だから…ユメになるの、そう言い再び俺に笑顔を向ける。

けれど、今の笑顔は強ばって唇が微かに震えていた。
変わろうとする事を拒絶されるのか…不安、なんだろうか……?

……俺がキミを拒絶なんて、絶対にあるはずないのにな。


くしゃりと悠女の頭を撫でる。
ほんの少し悠女が安堵したように見えたのは、俺の気のせいじゃないはず。


そこまでしようとする悠女……一体、何がそうさせているのか。
……多分。あの長い眠りの中で見た悪夢が原因だろうけど、悠女はその内容を教えてくれることは無かった。


何も解らない。
だけれど、悠女が強くなると笑おうとしているならこの変化は悪い事ではないのだろう。

俺はただ、変わらずにこの子を護っていられればいいのだから…。




「…わかった。ゆめって呼べばいいんだろ?」

ようやく俺は彼女に笑い返す。

悠女が決めたなら俺は従おう。
別に大したことじゃな…


「あ、違うよ?…久志ちゃんは、お姉ちゃんって呼んでね」
 
不器用な笑顔はすっかり影を潜め、可愛らしい微笑みで……

「はっ?」

お姉ちゃん…??
この、小さ…小柄な少女を姉と?

「私の誕生日がちょっと早かったら、一学年違うもん。せっかく姉弟なんだしねー??」

この日俺は悠女の意地の悪い笑みと、思いの外強情だという事を初めて知った。







結局、姉さんで勘弁してもらいました。









どんなキミになろうとも、俺は味方でいてキミを護り続けよう。
俺が能力者になったのは、キミの為だったのだから。
これは絶対口にはしない、秘かな誓い。

なぁ、姉さん? 

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